山田ちさと
作家の言葉
作家の言葉 山田ちさと
「Phantom of YOU」
半透明の薄い布地の裏と表、両面から描いて作品を作っている。そもそも薄い布地を木枠にぴんと張ったときの質感がとても魅力的だ。砂糖菓子のようにもろく、皮膚のように官能的だと思う。裏から絵の具を染み込ませて少しずつ様子を見る。あるところまで来たら表に返して描き残した地の形象につるんとしたメディウムで溶いた絵の具をのせていく。一気に色をのせていきたいのだが、この時もまた一色ずつバランスを見ながら少しずつ少しずつ。じりじりとした気持ちを押さえてあくまでもストイックに。
絵の具とメディウムと水。それに時間。色彩と形。そういった要素がいろいろに重なって思いがけない変化や表情がうまれる。忘れていた遠い記憶がよみがえったり、思ってもいなかった言葉が口をついて出てしまった時、ひどくドキドキしてしまう。意識と無意識、現実と幻影。そこにいるあなたは本当は誰なのか。ここにいるはずの私も揺らぎながら明滅するあやふやな存在なのかもしれない。それでも一瞬、きらりと何かが腑に落ちる瞬間・・・それをひとつの作品の完成として、また新たな制作を始める。
画家 山田ちさと
(2011年 ART FRAGMENTS 25号より)
半透明の薄い布地の裏と表、両面から描いて作品を作っている。そもそも薄い布地を木枠にぴんと張ったときの質感がとても魅力的だ。砂糖菓子のようにもろく、皮膚のように官能的だと思う。裏から絵の具を染み込ませて少しずつ様子を見る。あるところまで来たら表に返して描き残した地の形象につるんとしたメディウムで溶いた絵の具をのせていく。一気に色をのせていきたいのだが、この時もまた一色ずつバランスを見ながら少しずつ少しずつ。じりじりとした気持ちを押さえてあくまでもストイックに。
絵の具とメディウムと水。それに時間。色彩と形。そういった要素がいろいろに重なって思いがけない変化や表情がうまれる。忘れていた遠い記憶がよみがえったり、思ってもいなかった言葉が口をついて出てしまった時、ひどくドキドキしてしまう。意識と無意識、現実と幻影。そこにいるあなたは本当は誰なのか。ここにいるはずの私も揺らぎながら明滅するあやふやな存在なのかもしれない。それでも一瞬、きらりと何かが腑に落ちる瞬間・・・それをひとつの作品の完成として、また新たな制作を始める。
画家 山田ちさと
(2011年 ART FRAGMENTS 25号より)
半透明な薄い布地に裏表の両面から描画した抽象作品を製作していたが、近年では具象的な「Magic Hour」シリーズを展開している。作家にとって割と身近な街角風景を描いた作品で一見すると具象性は高いが、抽象作品に使われていたような形態が画面のいたるところに顔を出し作品構造の類似を感じる。
抽象作品ではテーマを「無意識を意識する」と話し、図を表から描いて出来た地を裏返して図とし、また裏返す・・・というものだった。「Magic Hour」は夕暮れ時の真っ暗になる寸前の時間帯のことを指す。昼でも夜でもない時間で、暗がりに目が順応していない時に見る街角は、今まで意識していなかったものが見えてくるのかもしれない。
1960年 東京生まれ
1987年 多摩美術大学大学院日本画専攻修了
受賞歴 神奈川県立近代美術館賞
個展・グループ展
神奈川県美術展、上野毛図鑑、TAMA VIVANT、インパクトアートフェスティバル(韓国) 日本インパクトアートナウ(韓国)、福島現代美術ヴィエンナーレ、アートプログラム青梅、その他多数
作品収蔵 神奈川県立近代美術館
杜の都・仙台ゆかり : ーーーー
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